有機質肥料の種類

 肥料は、植物の生長に必要な元素を供給するためのものであります。この意味では、堆肥や牛や馬の糞(厩肥)も入りますが、基本的に成分含有量の高いものを肥料と呼びます。堆肥や厩肥などは、肥料的効果よりも土壌改良効果を期待した「土壌改良材」と考えます。

 有機農法に関心が高まり、有機質肥料がもてはやされてきました。世間で語られるほど有機質肥料に植物に対する生長促進作用があるのか私には不明ですが、昔から語られてきた有機質肥料に対する知見と私の経験を踏まえて紹介していきます。

 市販されている有機質肥料は大きく2つに分けられます。一つは植物質のもので、もう一つは動物質のものです。

 植物質肥料は、成分は低いのですが3要素すべてを含みます。窒素の肥効は遅効性で元肥として利用されます。主に販売されているものは、菜種粕、大豆粕、ゴマ粕などです。

 動物質肥料は、窒素・リン酸成分が高くカリウムは含みません。窒素の主体はタンパク質・アミノ酸で、このアミノ酸の効果がよく謳われております。肥効は有機質肥料の中では即効性です。昔は蒸製骨粉が珍重されましたが、狂牛病事件以後骨髄を抜いた骨粉でないと流通できなくなり、一部を除いてほとんど見かけません。流通しているものは、魚粕、各種肉粕、蒸製皮革粉、一部では骨粉です。

 この他に動物質に含めてよいかどうかわかれるところですが、食品加工工場よりでる菌体肥料です。廃液の浄化に利用した菌を乾燥させて菌体肥料として販売しています。又、味の素などの食品会社は、菌を使ってアミノ酸を作っているので、アミノ酸を抽出した残りかすを乾燥させ肥料にしています。菌体肥料といっても成分が各々異なります。廃液浄化に使用した菌はその原料に類似した成分となります。魚加工工場では魚粕に類似した成分を持つわけです。

植物性肥料

菜種粕

 成分は大体窒素・リン酸・カリの順で、5-2-1です。窒素成分は遅効性です。菜種粕は、食用油メーカーから出荷されます。採油方法で、圧搾と圧抽の二種類の菜種粕があります。油分の残っている圧搾法の菜種粕を肥料効果が高いとして好んで使う農家もいますが、あまり圧抽の菜種粕との違いはないようです。菜種粕の特殊な効果として、植物の発根促進や除草効果などが言われていますが、真偽は不明です。

 ミカン農家は、夏肥えに菜種粕をたくさん施しません。理由は、動物質有機質肥料に比べて肥効が遅いからです。肥料分解試験では菜種粕は、それほど遅効性の肥料ではありませんが、乾燥のきつい夏季では肥効が遅れるのでしょう。9月に肥効が出てミカンの品質を悪くします。

 また、秋肥えでも晩秋になると低温の影響で肥効が遅れます。菜種粕に限りませんが植物質有機質肥料を多く施す場合には温度が高い時期に施すようにします。

 比較的安価な有機質肥料なのでよく利用されています。配合肥料には必ずといってよいほど配合されています。

 単肥として菜種粕を使用するには元肥として利用します。

大豆粕

 成分は、窒素7又は6、リン酸が2ぐらいです、カリは微量で表示されません。植物質有機肥料の中では一番窒素含有量が高い肥料です。こちらも菜種粕と同じく植物油メーカーより出荷されています。飼料用としての利用が主です。

 大豆粕には尿素分解酵素が含まれているので、尿素と混ぜて散布するときは(あまり行われませんが)早めに散布して土に混ぜこまないとアンモニアガスが揮散してきます。(窒素の損失です)

 窒素成分が高いので私は発酵肥料の原料に利用していました。

ゴマ粕

 肥料としてあまり流通していません。飼料としてゴマ粕のアミノ酸組成が魚のそれに近いので珍重されていると聞いています。成分は大豆より少し窒素成分が劣るくらいで似ています。大体6-1-1くらいです。

 ゴマ粕も発酵肥料の原料に利用していました。

米ぬか

 飼料用の脱脂米ぬかと精米機から出る生の米ぬかの二種類あります。脱脂米ぬかのほうが、変質が少なく肥効もやや早いです。配合肥料の原料に使用されます。一般に使用する米ぬかは生のほうです。発酵肥料の原料に必ず利用します。成分は2-4-1くらいです。リン酸を多く含みますが遅効性のものです。窒素成分も米ぬかのC/N率が13,5と、他の植物質肥料に比べて高いので肥料としての効果は遅効性です。発酵肥料の原料として利用する方法が一番合理的ですが、そのまま使用する場合は元肥として散布し、定植まで2週間くらい時間をかけた方が無難です。(たくさん施用した場合です)

 特異な利用方法としては、畑の通路部分に米ぬかを散布して雑草防除に利用するという方法がありました。米ぬかが発酵するときに出す有害成分で雑草を防除するというものですが、私は何度か試みたことがありましたが、うまくいきませんでした。

 上記4種類の肥料のほかに、タバコ粕を使用したことがありましたが、タバコが嫌いな人にはお勧めできません。センチュウ防除としての利用がよく言われていますが、卓効があるとは聞いたことがありません。
 単肥としての利用はこれだけですが、様々な種類の有機質肥料が外国から輸入され配合肥料の原料として利用されています。

動物質有機肥料

魚粕

 動物質有機肥料の主体が魚粕です。魚の肉の部分が多いものと、骨の部分が多いものとで成分が異なります。前者は窒素成分が高く、後者はリン酸分が高くなります。

 私が見た中で窒素11%の魚粕が最高の成分含量です。金額もかなり高いです。普通のよく見かける魚粕の成分は、7-4です。カリウムはありません。

 植物質肥料に比べて、タンパク質が微生物に分解されやすく比較的即効性です。魚粕肥料が、果実の品質(糖度)を上げると経験的に言われており、ミカン農家やイチゴ農家が好んで利用しています。

 食品加工会社より出荷されますが、肥料として高価な肥料であるため輸入の魚粕が、かなりあります。

肉粕

 魚粕と並んで果実の品質を上げる効果が期待されている肥料です。配合肥料の原料として主に流通しています。単肥としてはあまり見たことがありません。この肉粕につくダニが人間も刺すので注意が必要です。

 牛・豚・鶏と原料により呼び名が変わり成分も変わってきます。窒素成分が大分を占めます。肥効は比較的即効性です。

蒸製皮革粉

 牛の皮を蒸したものです。ハンドパックなどの加工に使用した牛皮の残りです。窒素成分が動物質肥料の中で一番高く12%くらいです。リン酸は含みません。

 肥効は膠分が含まれるため遅効性です。果実の糖度を高めるといわれる「プロリン」というアミノ酸を豊富に含むので、果樹農家に好まれます。このプロリンは構造タンパク質を構成するアミノ酸の一種で、皮膚・爪・毛・蹄などに、豊富に含まれます。

蒸製骨粉

 骨粉を使用しない年は果樹農家にはなかったのですが、狂牛病事件以来ぱったりと姿を消しました。主に肉粕と混合された肉骨粉という形で好まれましたが、現在は髄を抜いた骨ではないと骨粉として販売できないため非常に高価なものになりました。窒素成分はわずかですがリン酸が豊富に含まれています。

 似たようなもので骨を焼いた「骨燐灰」というものもあります。骨は生のままでは肥料としてリン酸を有効に利用できません。そのために焼いたり蒸したりして熱を加えてリン酸を変性させて肥料として利用します。

 世界で初めて化学肥料が製造されたのは過リン酸石灰ですが、この原料は骨です。酸で処理してリン酸を有効化しています。(現在はリン鉱石が原料です)

菌体肥料

 食品加工工場よりでる副産物が菌体肥料です。会社により成分はバラバラなので基準になる数値はありません。

 窒素成分が主でリン酸があります。肥効は比較的遅効性です。動物質肥料の中では比較的安価なので利用しやすい肥料です。主に配合原料として流通しています。

有機質肥料のコスト

 有機質肥料の最大の欠点は、コストが高いことです。収穫物の販売価格がそのコストに見合う場合は使用されますが、そうでない場合は化成肥料と配合してコスト的に折り合うようにして使用します。

 硫安・魚粕・菜種粕のコスト比較をしてみました。

  1袋当り単価 N1㎏当り単価 硫安を1とした場合
硫安 1000円 238円 1
魚粕 2700円 1929円 8倍
菜種粕 1000円 1000円 4倍

 最近の肥料価格より比較してみます(簡単にするため端数を切ります)。窒素成分のみの比較です。窒素成分1kg当たり単価は小数点以下四捨五入しました。  窒素成分だけの比較なので有機質肥料には不利な数値ですが大体の傾向がわかります。硫安と比較して魚粕は8倍、菜種粕は4倍です。
 化成肥料に比べてコストがかかることがわかります。したがって高価な有機質肥料を無駄にしないように利用する施肥法が大切になってきます。