トマトの品種による集約栽培と粗放栽培

 現在ではトマトは集約栽培(資材や手間をかける栽培法)を行うものという認識がありますが、昔はトマトの粗放栽培が営利的におこなわれていました。

 これはトマトの品種特性と関係があります。品種により集約栽培向き品種と粗放栽培向き品種の2種類があります。

 集約栽培向きの品種は、現在主流の栽培品種がそうです。有名な品種は「桃太郎」です。潅水が可能で多肥の管理ができる環境で高品質多収が可能な品種です。簡単に言えば、ハウスにて栽培されている品種はすべて集約栽培向きの品種です。

 もう一つの粗放栽培品種は、露地の管理が行き届かない圃場で栽培される品種です。私が以前栽培した「世界一」がその品種です。乾燥がきつく土が痩せている畑でも十分な品質と収量をあがることができます。露地栽培トマトが主流だった時には、条件の悪い畑でよくつくられていました。農家の自家消費用や家庭菜園でもこの品種が好んで栽培されていました。

 世界一トマトを栽培した経験では、露地栽培では収量は少なかったのですが果実の品質・生育に関しては好成績を上げましたが、ハウス内で栽培すると着果はよいのですが、葉カビ病が多発した上に果実の着色もあまりよくありませんでした。なによりトマトの味が甘みも酸味もない所謂馬鹿味となってしまいました。

 露地で栽培した世界一トマトは収量と果形の揃いこそは現在の品種にかないませんが、病虫害に対する防除をあまり必要とせず、肥料や潅水もほとんど行わなくても強健に育つ特性を持ち、果実も鮮紅色の果色に味は酸味とコクのある強いトマトの味でした。

 この実例から見て、集約栽培向きの品種を粗放栽培すると収量もあがらず品質も劣悪なトマトしか収穫できず、粗放栽培の品種を集約的に栽培すれば病気や害虫に弱くなり収量はでますが味は劣悪なものしか収穫できないということになります。特に現在ではハウス栽培が主流となっていますのでハウス栽培用の品種を露地で栽培したら降雨により裂果が起こったり、病害虫の被害にひどく悩まされることがあります。トマトは品種により栽培環境を選ぶ傾向が強くあります。

 現在販売されている品種はカタログではよいことばかり書かれていますが、露地栽培可能かハウス栽培向きの品種なのか記載のある品種を選ぶことが必要です。また、家庭菜園や農家の小売りや自家消費用として栽培するトマト品種には昔の品種の利用を勧めます。

 昔の品種はかなり詳しくその品種特性が資料に記載されているので安心して園地の環境に向く品種を選択できます。また、ほとんどが固定品種なので自家採種を行っても問題はありません。決して現在の品種に劣るものではないと考えています。

 品種と栽培は車輪の両輪のようなもので、どちらかだけ論じてみても農業経営には結びつきません。目新しい品種やカタログの宣伝文句に踊らされるだけではいつまでたっても進歩がありません。その土地の環境と経営の集約度を判断したうえで品種を選択する方法こそがトマト栽培を有利にすると考えています。

昔のトマト品種より昔の品種の特性を分けてみました。これらの品種はすべて露地栽培可能です。

アーリーピンク
多肥・集約栽培

市原早生(いちはらわせ)
多肥・集約栽培。3~4段花房で摘心。

豊玉(ほうぎょく)
多肥・集約栽培。台地・砂地に向く。3段花房で摘心。

ニューグローブ
少肥・粗放栽培。台地に向く。

渡辺成功(わたなべせいこう)
少肥・粗放栽培。台地に向く。長期収穫。

松島ピンク(まつしまぴんく)
粗放栽培。台地向き。長期収穫。

デリシャス
集約栽培。湿地向き(粘質土)。芯止まり。

極光(きょくこう)
多肥・集約管理。粘質土壌向き。

栗原(くりはら)
少肥・粗放栽培。長期収穫。

ボンテローザ
少肥・粗放栽培。台地向き。

世界一(せかいいち)
少肥・粗放栽培。台地向き。

福寿1号(ふくじゅいちごう)
多肥・集約栽培。粘質土壌向き。長期栽培。

福寿2号(ふくじゅにごう)
多肥・集約栽培。粘質土壌向き。長期栽培。

以上です。又資料より新たな品種が見つかりましたら追加していきます。