昔のスイカ品種

 日本にスイカが導入されたのは約380年前という説がありますが、明治中ごろに至るまでの品種については明らかではないようです。明治35年頃より外国から多数の品種が導入され日本在来品種との交配が始まり、日本独自のスイカ品種が作出されました。

 最初に導入されたスイカ品種は、アイスクリーム、シュガークリーム、ブラックダイアモンド、スイートサイベリアンなどです。そして、奈良県ではアイスクリームと黒皮系在来種との交雑により、大和スイカが作出されました。富山県ではラットルスネークより選抜された黒皮スネークが栽培され、その後黒部スイカとして長く特徴ある俵型のスイカとして栽培されています。

 スイカ育種の中心地は農林省指定試験事業でスイカ育種が行われていた奈良県農事試験場です。大和スイカより大和三号と甘露(外国よりの導入種で天理教の甘露台付近で栽培されていたのでこの名がついたようです)が交配され新大和種が作出されました。戦前の主力栽培品種は新大和種に占められました。

 昭和8年、新大和種の後代より選抜された「旭大和」がスイカ品種の革命を起こしました。糖度が高くて玉の揃いがよく、蔓割れ病に強くて収量が高いと好評でありましたが、皮が薄いため割れやすく長距離の輸送ができないために消費地近郊の栽培に留まりましたが、1代雑種の片親として用いられました。現在のスイカ品種のほとんどがこの「旭大和」スイカの血を引いています。

旭大和スイカ

 戦後すぐに作出された旭大和を親としたF1品種は、新旭(しんあさひ)、富研号(ふけんごう)、旭都(きょくと)、緑富研(みどりふけん)、太陽(たいよう)、三山号(さんざんごう)などが挙げられます。

 やまひこ農園では現在でも入手可能な往時の名品種を試験栽培してきましたので紹介していきます。(「西瓜の品種」、「園芸大辞典」を参照)


旭大和

旭大和スイカ

 スイカ育種の権威「神田武」さんが、「爾来西瓜品種中の王座を占め、市場価格においてこの右に出るものはない」とほめる品種が「旭大和」です。
 味についても神田さんはこのように記載しています。「従来の品種がシロシタ(甘味)ならば、新大和系統はキューバ糖、旭大和は白砂糖、大和クリームは氷砂糖の甘さと称するべきだろう」。
 これまでのスイカ品種とは一線を画す品種であったことがわかります。

 外見は縞がないのが特徴です。肉食は赤色でシャリ間は現行の品種と比べると少ない感じです。糖度は10度から12度くらいありますが、これも現在の品種と比べると同じ糖度でも甘さを強く感じません。やさしい甘さであります。果皮が非常に薄く完熟すると置くときの衝撃で割れることがあります。

旭大和スイカ

 

 成熟は早生で積算温度900度くらいです。日数にすると目安は、開花(交配)から30日です。2011年の栽培記録を見ると、猛暑の年であったので23日から24日で完熟になりました。28日にはすが入ってきました。旭大和に限りませんがす入りが早いことが早生種の欠点であります。

 「旭大和」のような早生種は、開花から収穫までの期間が短いので着果負担が少なく、蔓の数を多く配置してあると長期間かけて多くのスイカを収穫することができます。


乙女

 昭和8年ごろ禹長春さんが農事試験場鴻巣試験地にて、「大和3号」と「嘉宝」との組み合わせから選抜育成したものと野菜園芸大辞典に記載がありました。

乙女スイカ

 外見は楕円形で小型、縞なしです。果皮がしっとりとしていて柔らかい感じがします。スイカらしくなく手で皮がむけます。果肉は赤色で柔らかく甘さはそこそこです。

 成熟は、積算温度700度から800度。日数にすると25日が目安になります。私が栽培した時の収穫までの日数は3週間(21日)でした。


大和クリーム2号

大和クリーム2号

 この大和クリーム2号は現在でも通用するスイカ品種であると私は考えています。大和クリーム1号と同じく、昭和3年「黄金」と「甘露」との交配種より、昭和11年F8において選抜されました。

 外見は綺麗な縞模様がでて綺麗な円形です。果肉は薄い黄色ですが、食感はこれまで食べたことのない初めてのものです。硬質の肉質ですが口に入れるとまるで氷を食べたようにふわっと消えていきます。甘さは神田さんのお話と同じく氷砂糖の上品な甘さです。

大和クリーム2号

 欠点は、旭大和と同じく果皮が薄いため割れやすいことです。また、大和クリーム2号に包丁を入れるとびっくりするくらい水が出てきます。切ったまま放置しておくと果肉が酸化して変色してきます。このような欠点があるのでスーパーでは販売されない幻のスイカとなっているようです。

 熟期は中生で、積算温度1,200度、日数は40日が目安です。比較的す入りが遅いので収穫しやすいスイカであります。

 とてもおいしいスイカであるので、やまひこ農園では栽培を継続していきます。


大和クリーム3号

大和クリーム3号

 白肉系スイカのご先祖様が大和クリーム3号です。大和クリーム1,2号と同じ組み合わせより昭和11年F8において選抜されました。
外見は大和クリーム2号と同じく綺麗な縞模様が出ています。少し小ぶりですが着果性がよく1本の蔓に2個着果し成熟することがあります。

 果肉は白で甘さは薄くわずかに酸味があります。あまり特徴がなく、スポーツ飲料をイメージするような味です。

大和クリーム3号

三笠

三笠スイカ

 数奇な運命をたどった不思議な品種です。奈良農試において、昭和11年千葉農試より取り寄せて自殖させていた「都1号」を昭和19年より貯蔵し、昭和23年栽培したところ、その中から突然変異により生じたとされています。昭和26年に試作され翌年命名されました。

 外見は「旭大和」と同じ縞なし円形です。大きさもほぼ同じです。糖度は12度くらいで、舌触りのよい肉質です。早生種で収穫までの期間が短いですがす入りが少ないので、収穫しやすい品種であります。欠点は旭大和と同じく皮が薄いため割れやすい点です。

三笠スイカ

 三笠の種子は市販されておらず私はジーンバンクより入手しました。


黒部スイカ

黒部スイカ

 大きな俵型で有名なスイカです。「黒部スイカ」の名称は品種名ではなく商品名であり、大きな俵型スイカの総称のようです。
 黒部スイカは、明治末期結城半助氏が富山県に導入した「ラットルスネーク」が順化土着化したものとされています。現在の黒部スイカは品種改良されたもので同じものではありません。

 私が栽培したものはラットルスネークの系統である黒部スイカで、外見は大型の俵型です。果皮は厚く、甘さはそこそこです。肉質は繊維が多く荒い舌ざわりです。

 保存性がよいので北陸地方では晩植して9月から10月に収穫して貯蔵し、正月に出荷する方法をとっていました。
熟期は遅く収穫は、開花(交配)から45日より50日くらいかかります。