まくわうりの品種

 まくわうりは東洋だけに分布したウリ科の品種です。日本の品種は華北のまくわうり品種が伝播してきたものであろうと考えられています。日本に土着したまくわうりは、6~7月の湿潤・寡日照条件下でよく生育し、比較的強い甘味を発揮する大きな特徴があります。耐暑性については地域性がありかなり大きな変異があるようです。

 日本各地には在来種として多くのまくわうり品種があります。用途としては生食用だけではなく漬物用も多くあります。私の住む静岡ではあまりメジャーな作物ではなく、大正生まれの私の祖母は私が栽培するまでまくわうりを食べたことがありませんでした。漬物になったまくわうりは食べたことがあるのですが、まくわうりの生食は初めてのようです。

 私の世代はプリンスメロンの登場後の世代ですからノーネットメロン(プリンスメロン)やマスクメロンを食べていました。まくわうりは歴史書の中でしか目にしたことがありません。

 まくわうりの知名度は世代的なものだけではなく地域的なものがかなりあるようです。この静岡ではまくわうりを知っている人は少数です。現在静岡県外のお客様よりのご注文でまくわうりの生産を継続しております。

 この多種あるまくわうり品種の歴史について「園芸大辞典」より紹介します。

まくわうり品種の歴史

 中国では古くから肉質によって、“めんうり“と“ぜいうり“に大別された。銀マクワや金マクワによって代表されるわが国の在来種は’ちまり‛、‘成歓’、‘梨頭瓜’、‘たつめんくわ’、‘鳥瓜’、などの‘めんうり’系華北品種の退化型とみられるものが多く、その後導入された‘梨瓜’や‘棗瓜’(なつめうり)は‘壱密筒’や‘白密筒’、‘女臂瓜’などの‘ぜいうり’にあたる。現在東北、東北・北陸・関東一部に残存する‛南部金‛や‘会津黄金’‘小型黄金’などの品種は‘金マクワ’の順化系といわれ、‘落瓜’‘甘露’などの品種は‘銀マクワ’の一系統とされている。

 ‘梨瓜’は、関西を中心に広く栽培されて、‘白丸梨瓜’、‘石川梨瓜’、‘小型白皮’、‘中型白皮’、‘大型白皮’、‘白丸砂糖’などの品種を生じ、大正4年(1915)ころまで栽培されたが、‘黄金’系品種に劣るため次第に姿を消した。戦後(1950年頃)‘ニューメロン’(山中メロン、みずほメロン、二十世紀)が急速に普及して全国的な主要品種となったが、これらは‘加賀梨瓜’とも呼ばれ、萩原・西田(1959)は‘在来白皮’から育成されたものであるとし、またメロンとの交雑によって生じた(島津1955)ともいわれる。

 黄金系の‘なつめうり’は明治37~38年(1904~1905)に中国から導入され、その外観・収量・品質などによって在来種に代わって急速に普及した。その後さらに数次にわたって導入され、また分系改良されて大・中・小型など多数の地方品種を生んだ。このころから交雑育種も行われるようになり、明治39年(1936)には奈良農試で白皮の‘梨瓜’と‘棗瓜’の交配から‘黄甜瓜’(きまくわうり)が育成され、昭和11年(1936)にはこれの系統分離によって大型の‘黄1号’、中型の‘黄2号’が育成された。これらはその後‘奈良1号’及び‘奈良2号’とも呼ばれ、関西を中心に四国・九州まで広く普及し、昭和30年(1955)ころまで栽培された。関東では‘千葉棗瓜’から昭和6年(1931)に果形中型の‘黄金9号’が分系育成され海岸砂土地帯を中心に、現在もなお広く栽培されている。愛知県では‘稲場瓜’、‘昭和瓜’などの中型種が分系され、さらに黄金系品種間の自然交雑から‘尾張黄金’や‘金俵’などの品種を生じ、‘姫黄金’‘千成黄金’など、極早生で小型の品種も分系淘汰された。

 来歴は明らかではないが、滋賀県では白皮の菊座型で耐暑性の強い晩生の‘悠紀メロン’(菊メロン)が栽培され、そのすぐれた品質と外観から地方都市の近郊地に普及し、7月中・下旬~8月にかけ高級品としてごく最近まで珍重された。‘悠紀メロン’は黄金系品種との交雑によって‘出雲メロン’や‘金筋メロン’を生み、また昭和29年(1954)には、‘黄1号’との交雑育種により、丸型黄金色の‘寿’や丸型白皮の‘白1号’などを生んだ。これはさらに‘梨瓜’との交雑育種によって、‘スノーボックス’や‘X1号’などの品種を生じたが、特筆すべき普及は見られなかった。

 まくわうりの品種解説

1、成歓(せいかん)群

 韓国の重要品種で多数の系統が存在し、昭和3年(1928)‘朝鮮メロン’として、皇室に献上されてから認識が高まり、昭和25年(1950)ころまで西南暖地に自家用として栽培された。中国や韓国では、よくその気候に適応して、甘味強く‘めんうり’中最高の品質といわれるが、わが国の湿熱条件下では十分その能力は発揮し得ない。これらの中には、果形や外観は‘成歓’に類似し、肉質の異なる‘新津’や、果皮黒緑色で斑点なく、果面の平滑な‘黒皮’、外皮白色の‘成歓白’などがある。

代表品種

成歓(せいかん)

 果面に不規則なおうとつがあり、虎皮状の濃緑色はん紋や隆起した縦すじがあって、カエルの背に似ている。果形は肩部の細い洋ナシ型で1果700~800ℊ、果肉はとう(橙)色で厚く、ぜい質、草勢強く、耐暑性も強いが多湿地帯では甘みが少ない。種子は小さくて厚みを持ち(ゴマ粒)、色は黄かつ色である。

2、銀マクワ群

 美濃国真桑村の種子を京都の東寺付近に栽培して果皮の白色がかった一種を‘銀マクワ’(本田瓜)と呼んで、‘金マクワ’と区別した。当群の変種は非常に少なく、生態的特性や草姿・草勢・果形などよく‘甘露’に類似する。
大正4年(1915)ころまで東北地方の主要品種とされたが、黄金系品種や‘ニューメロン’などの普及に伴って次第に減少し、現在は自家用として東北農村地帯の一部に残存する程度である。

代表品種

銀マクワ

 果形は円筒乃至楕円形で、500~700ℊ、幼果は緑色で濃緑色の鮮明な細い縦じまを有するが、熟すると果皮銀色の縦みぞに果皮より濃い緑色のすじを生じる。果肉は鮮緑で厚く、肉質はめん質で柔らかいが、甘味・芳香に乏しい。

3、甘露(かんろ)群

 寛永年間(1630年頃)すでに栽培された古い品種で、‘金マクワ’から順化したと思われる。早生で丸型の‘南部金’や、‘銀マクワ’に類似した果形円筒型の‘甘露’、岐阜および愛知地方に栽培された‘落瓜’なども包合される。

代表品種

甘露(かんろ)

 果は濃緑色、円筒型で、果面に比較的幅広く深い数条の縦じまがあり、熟すると銀白色の条はんとなる。果肉は鮮緑で柔らかく、香気は強いが甘みは少ない。

妻鹿(めが)メロン

 兵庫県に栽培多く、姫路市では‘ベッテンウリ’の名で明治30年(1897年)ころから栽培された。果形は‘南部金’に類似するが、熟しても黄色は発現せず、縦みぞにひび割れを生ずる。果肉は堅く、甘味が強い。土地によっては、‘青’とも呼ばれる。

梨瓜(なしうり)群

 中国特に華中の主要品種で、‘白皮子’から出発したといわれる。元来、白皮・白肉で外観美しく、果形は丸型~円筒型で甘味は少なく、品質も劣る。これらは昭和4年(1915)ころまで関西を中心に広く栽培されたが、黄金系品種によって圧倒された、‘ニューメロン’は、その優れた品質によって戦後急速に普及し、一躍主要品種の座を占めたが、これは、‘梨瓜’とやや形質的に異なった特性を有し、梨瓜群の中では異質な存在になっている。

代表品種

ニューメロン(山中メロン、二十世紀)

 ‘在来白皮’から育成されとする説、‘梨瓜’とメロンの交雑によって生じたとする説、中国華中の‘梨頭瓜’が戦後導入されて発展したとする説などがあって、その由来は明確ではない。
果形は扁円~‘二十世紀ナシ’型、果皮は淡緑~白黄色で、肉色は淡緑~淡黄白色、肉質はぜい質で、甘味・芳香ともに強く、その品質はわが国のまくわうり品種随一である。草勢は中位で、葉色わすかにうすく、雌花の着生・結実率にも難がある。‘早生ニューメロン’や‘みずほメロン’は、これの分系改良種である。

悠紀(ゆうき)群

 滋賀県に多く栽培された品種で、果実は白皮・白肉、果面に菊座型の大きな数条のみぞを有する晩生種で、とくに耐暑性が強く、果実の大きさや条こう(溝)の深さなどによって、数種の系統に分かれる。
育種親としての能力が高く、他品種との交雑によって、‘寿’や‘出雲メロン’‘縞瓜’‘金筋メロン’‘銀泉’など多数の品種を生じた。

代表品種

悠紀メロン(菊メロン)

 果皮白色、果形扁円型で15条前後の深い菊座型条こうを有する。1果150~200ℊ程度の小果種で、肉は白く、ぜい質。高温期でもよく甘みがのり、さわやかな食味と上品な外観から都会向きの高級品として珍重された。草勢は強く、晩生で多湿地帯では裂果しやすい。

出雲(いずも)メロン

 ‘悠紀メロン’と‘黄金’系品種の自然交雑によって生じたといわれる。果皮は黄色で10数条の浅い黄白色の条こうを有し、果形は短円筒型、果肉は白く、ぜい質で甘み強く、品質も良い。草勢は非常に強く熟期は遅い。愛知の‘縞瓜’や‘金筋メロン’は本種によく似る。

黄金(おうごん)群

 ‘黄金’系品種は、他の品種群に比べて草勢強く、耐暑・耐湿・耐病性などもすぐれ、豊産で適応範囲が広い、肉質は全般にかたく、甘味は‘ニューメロン’や‘悠紀メロン’には及ばないが高い方に属し、裂果や果柄の離脱の起こりにくい品種が多い、早熟性や商品性などについてもすぐれ、経済品種としてとくにすぐれている。

代表品種

金俵(きんぴょう)

 ‘尾張黄金’から分系とうたされた品種で、果は300ℊ前後の中玉、肩部の肉付が特によく、豊円な俵型、花落部は小さく、扁平で外皮は濃黄金色、果肉は白く、やや堅いが甘み強く、裂果も比較的少なくて暖地や平たん地の水田地帯での早熟栽培によく適応する。

姫黄金(ひめおうごん)

 愛知県中島郡一帯に栽培されていた‘小型棗瓜’から選抜淘汰され、昭和30年(1955)に命名された。果は150~200ℊの小型で短楕円型、果皮は濃黄色で肉は薄いが、甘味は強い。まくわうりの中では熟期最も早く、結実よく豊産、早熟栽培に適するが、中玉系品種に圧倒されて市場性を失った。

三光(さんこう)

 ‘黄金’群品種間の一代雑種で昭和31年(1956)に命名された。果は300ℊ前後の中玉で果皮黄色、果肉は白色で柔らかく、品質は良いが、多湿地帯では裂果しやすい。