寺尾博 博士の質問 (貴族院本会議) その2

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 ずいぶん長い質問でした。これ読んでみないと分かりませんが、読んでみても分かりにくい文章です。コピーの文字がかすれて見難い上に旧字体を使っています。また、言い回しも(慣れてきましたが)なじみの無いもので・・・大変です。

 竹中博士が簡潔にまとめてくれております。


 寺尾博士の優生問題の調査研究には国立の研究所が必要ではないかとの質問に対し、河合厚相及び和田農相は国立遺伝学研究所の設立は望ましいと答えたが、田中文相は国家が学問的研究をすることは官僚が主体となることになる幣があるから、学者が研究主体となり、官僚は助成連絡にあたる方がよいではないかと答えた。


 田中文相は、田中耕太郎法学博士です。後に参議院議員となり緑風会に所属します。


 簡単に書いてある方が楽ですが・・・1次資料を挙げないと何か苦労しないで書いているようで・・・参考までに。

 長いです。質問も長いが答弁も長いです。事前に答弁書を作成しておかないとこんなに長く答弁できないと思いますが。


 
 竹中博士の記録によりますと、

 12月27日増井研究室(東大農学部畜産学教室)に増井・木原・古畑・和田の4博士と宮山事務官が集まり、第2回遺伝学研究所設立準備委員会を開いた。主として田中文部大臣の意見に対処してであった。また予算委員長竹田儀一氏の助言を参考にして議を練った。

 とあります。

 遺伝研30周年記念誌にあります増井博士の寄稿に田中文相の意見が出てきます。たぶん、同じ考えをお持ちだったのでしょう。

 

 この記事は平成23年11月3日に作成しました。

〔國務大臣河合良成君登壇〕

 國務大臣(河合良成君) 只今寺尾議員から國民優生法に關聯して御尋がありましたが、是は勿論人口問題と相竝んで非常に重大な問題でありまするが、一方人口問題は、昭和三十年頃には九千萬、五十年頃には一億を遙かに越すと云ふやうな推定になつて居りまして、色々此の人口問題には、之を増加さして行くかさして行かないかと云ふ問題に付て、根本的の問題が色々ありまするが、此の人口の質の問題に付きましては、是はもう何も問題がありませぬ、絶對的に是は質を善くして行かう、改善して行かうと云ふ點に付ては、もう一つの問題もないのであります、結局我々民族の精神的及び體力的の向上、是はどうしてもやつて行かなくちやならぬ問題であり、又新憲法に依りましても、個性の發達、自覺と云ふことが我々國民、國家存在の目的であると言うても宜いのでありまするから、其の線に向つたことは出來るだけのことをして行かなくちやならぬことは、勿論もう議論のない所であります、それで只今遺傳的の不健全者と云ふものは、なかなか相當の數字に上つて居りまするので、正確な數字は分りませぬが、約三百萬にも上つて居やせぬかと思はれるのであります、さうして其の中で手術を要する者が先程御指摘の二十萬と云ふことだらうと考へます、勿論斯う云ふ風な素質の惡い人が段々殖えて行きますると、社會的及び家庭的に色々負擔の増加、不利益と云ふやうなことが出來るのでありまして、出來るだけさう云ふ風の面は少くしたいと云ふことは、勿論さうなくてはならぬのでありまするが、唯國民優生法と云ふものは、任意的の建前になつて居りまして、強制しないと云ふ建前に只今なつて居るのであり、強制しても宜しい途はありまするけれども、今迄戰時中實行して來ましたものは任意的の建前になつて居りまするので、優生法實施の結果眞に手術を受けた人と云ふものは、數は極めて少いのであります、是は私此處に數字は持ちませぬが、少いのであります、それでは今後此の任意制を改めて強制制を採るかと云ふことに付きましては、是は相當大きな問題でありまして、目的の達成の上から言へば、問題なく強制にした方が宜しいのでありますが、段々斯う云ふ時代になりまして、個性の自覺、個人の意思の尊重と云ふことが段々大きな面にクローズ・アツプして來る事情でありまするから、出來れば強制を避けまして、さうして只今御指摘のやうな優生思想の普及と云ふ面でやるべきものであると云ふ考で居りまするけれども、是も目下政府として色々其の利弊に付て研究をして居る所であります、優生問題に對する思想の普及、是はもう問題なく出來るだけやらなくちやならぬことでありまして、只今迄の戰爭に災ひされまして、斯う云ふ面に對する普及と云ふことは甚だ微力であつたと云ふことは、是は疑ひないことでありまして、今後斯う云ふ點に付きまして、十分積極的方法を採らなくてはならぬと云ふことを確信致して居ります、又其の手術の施設と云ふことに付ても、至らぬ所は多々あります、が、今日は醫療施設全體が非常に不足して居りまして、御承知の通りに、山村にはまだ醫療施設の屆かぬ所もありまするし、それから又國民健康保險の關係に付ても、醫療施設の不足を感じ、戰災都市に付ては、特に醫療施設の燒失の爲に、非常な困難をして居るやうな事情でありまして、斯う云ふ面と、矢張り一つのものをあちらこちらに振り廻さうと云ふことになると、十分行かぬ點もあります、勿論醫療施設の普及と云ふことと此の優生施設をやると云ふこととは、或點迄は竝行的に行くことでありますから、斯う云ふ點に付ても十分考慮する積りで居ります、それから尚遺傳研究及び遺傳の研究に對する意欲を高めると云ふ點に付きましては、是は全く御同感でありまして、特に專門の學者の非常な決意と御進出とを希望して居る次第でありますが、政府としましても、出來るだけの援助を致す考で居ります、先進國家との學術上の交通も、段々平和會議を契機として開けて來ることと思ひまするので、十分さう云ふ點には力を致したいと思つて居ります、殊に國立遺傳研究所の御話がありましたが、是は私共としましては、優生及び此の醫療の方面からどうしても重大な關心を持たざるを得ないのでありまして、斯う云ふ點に付ては是非一つ立派な研究所が出來ることを希望致して居ります、又微生物、酵素などの點に付きましては、是は此の本年度の豫算に計上したい積りで財政當局と交渉して居りまするが、是は食生活綜合研究所と云ふものを置きまして、此の面から微生物なり酵素なりの面に入つて行きたいと云ふ考も持つて居ります、兎も角も平和國家、文化國家として是から立つて行かなくちやならぬのでありまするから、斯う云ふ自然科學、特に遺傳等に對しまする非常な積極的の進出、自然の神祕の殿堂を之に依つて開いて行くと云ふ面などは日本の將來立つべき最も重大な點と思つて居ります、御質問の趣旨には同感であります、出來るだけの努力を致す積りで居ります。
  〔國務大臣田中耕太郎君登壇〕

 國務大臣(田中耕太郎君) 人類及び生物の遺傳に關する研究が國策的に見ましても、亦學問的見地からも極めて重要であると云ふことに付きましては、只今寺尾博士から縷縷御伺ひ致しましたことに對しまして、全く御同感至極でございます、文部省に於きましては遺傳學の基礎なり應用の方面の研究課題に對しましては、十分其の重要性を認めまして、豫算の範圍内で許されます限りの研究費を支出して援助致して居る譯でありますし、又今後も援助を益益進めて參りたいと存じて居る次第であります、研究機關の問題でございますが、斯樣な遺傳學の研究を促進して參りますのに付きまして、是は非常な各專門に亙る綜合的の研究を必要とする譯でございますが、斯う云ふ點に於てこそ從來の綜合大學の實を發揮する最も宜い分野ぢやないかと云ふ風に存じます、又全國に亙る所の學會と云ふものがあります譯でありますから、其の學會が協力して、さう云ふ問題に付て連絡を取つて研究すると云ふ最も宜いテーマではないかと存じます、大學に研究所を附置するのも一つの考でありませうし、又先程御話がありました強力な國立遺傳研究所と云ふやうなものを設けると云ふのも一つの考でございます、文部省と致しましては、唯國立の研究所と云ふやうなものを設けますことに付きましては、終戰後色々の考慮を拂つて居るのであります、と申しますのは此の今後の文部行政の行き方と致しましては、國家が或事を或研究所を設けて學問的の研究をする、詰り官僚が主體になりまして研究すると云ふことは、是は成るべく避ける方針で行つて居ります、詰り研究は大學なり民間の學會がやる、學者が直接にやると云ふことがそれが一番大切なんでありまして、從來國策上と云ふやうなものは何でも皆國家が取上げてやると云ふやうな所に弊害も生じた譯であります、でありますからして、研究自體は民間なり、或は大學の學者の創意に委ねる、さうして文部省はそれに對して飽く迄助長的な態度を以て必要な場合に十分補助する、又連絡を圖ると云ふやうな方面に只今の文部行政の方針が參つて居るのでありまして、さう云ふ意味からして此の問題も矢張り考慮しなければならぬと存じて居る次第でございます。
 (この太文字の部分であります)

 〔國務大臣和田博雄君登壇〕

 國務大臣(和田博雄君) 寺尾博士の私に對しまする御質問に御答へ致します、品種の改良其の他の點に付きまして、御話のやうに遺傳學が非常に大きな役割をして居ると云ふことは寺尾さんの仰しやる通りでありまして、我々としましては現在此の農業の生産力を高めて行きまする上に於きまして、實は唯農學と云ふ部門だけでなしに、有らゆる部門の科學者の協力を得たいと思つて居るのであります、又さうしなければ、有らゆる自然科學者の協力なくしては日本の農業のさう云ふ技術面の、言ひ換へれば發達と云ふことはないのではないかと云ふことを考へて居るのでありまして、例へば單なる遺傳學だけでなしに生物物理學でありますとか、或は其の他緑遠いやうでありますが、理論物理學、或は其の他の生物學、科學と云つたやうな各方面の是は權威の方々に農業の生産力其のものを高めて行くに付ての協力を得たいと思つて居るのでありまして、農林省自體と致しましても、既に綜合研究の費用を取りまして、農林省關係に於きまする各部門の綜合調整を圖りまして、一つの問題を有らゆる面から檢討致しまして、之が解決を圖つて居るのであります、農林省と致しましては、今後の農業の發達と云ふことを考へまして、農事試驗場、其の他畜産試驗場、或は茶業試驗場等、試驗場其のものの經費は、是は殖しまして、十分な研究をやつて行く考で居るのであります、又現に行ひつつあるのであります、さうして御話のやうに、是は科學が理論の部面とアプリケーシヨンの部門と二つの面がありまして、それが御互に影響し合つて、或は實驗の應用の部面が進むことに依つて、理論的のものが又其處に發達し理論的のものが進むことに依つて、應用の部面も亦それに刺戟されて、新しい天地を開拓して行くと云ふことに科學の進歩はなるのでありまして、我々としましては少くとも農林省関係の面だけに付て考へましても、御話のやうに、非常に基本的の所から、且綜合的に、殊に從來日本の學界に於て兎角缺點と言はれて居ります共同研究の部面を十分に促進して行きまして、是非資源の少くなりました日本に於きまして、農業の面に於てだけでさへも、是は是非とも科學の發達に依つて、其の生産を高めて行きたいと考へて居る譯であります。

 寺尾博君 簡單でありますから、此の席から御許し願ひます。

 議長(公爵徳川家正君) 宜しうございます。

 寺尾博君 只今各大臣から懇切なる御説明を戴きまして誠に有難うございました、文部大臣の遺傳研究所の御話は私として尚考慮すべき點があるやうに思ひますが、一應了承致しまして、私の質問は終ります。

 議長(公爵徳川家正君) 本日は是にて延會致したいと存じます、御異議ございませぬか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

 議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、明日は午前十時より開會致します、議事日程は決定次第彙報を以て御通知に及びます、本日は是にて散會致します。
   午後零時十分散會

 お疲れ様でした。

 

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このページは、yamahiko-farmが2012年3月17日 16:44に書いたブログ記事です。

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